Twitterを眺めていると次のような興味深いツイートを見つけた。
吉田豪「最近、アイドルシーン総括の話になるたびに出るのは、地下で疲れた人達がみんな乃木坂、欅坂に流れてるっていう話なんですよ」
宇多丸「元々メジャーなところに疲れた人が地下に行ってたのに、今度は地下に疲れた人がどメジャーに行く(笑)」— わんだー (@wonder_wild) April 11, 2017
このツイートの吉田豪氏の発言の通り、最近は地下アイドルオタクがメジャーアイドルに出戻る現象が起きている。
今回は何故、そのような状況になっているかを上記ツイートよりも噛み砕いて考察する。
目次
メジャーに飽きて地下へ
元々、以前までは「メジャーに飽きて地下へ」という今と正反対の現象が起こっていた。
アイドルオタクの入り口のほとんどがメジャーアイドルである。
代表的なグループ(事務所)は以下の3つだ。
・AKB48などの48グループ
・ももいろクローバーZに代表されるスターダスト系列
・ハロー!プロジェクト
では何故、メジャーから地下へのオタクの流出が起こったか。
それはメジャーアイドル現場への不満が大きくなる一方で、地下アイドル現場ではそのような不満が一切なかったからだと言える。
メジャーにはなくて、地下にあるものとはどのようなことか以下に示す。
実際に身に覚えのあるオタクも多いだろう。
アイドルとの距離が近くなる
近い。とにかくアイドルとの距離が近い。
僕が初めて48グループ以外のアイドルグループのイベントに行ったとき、そのように感じた。
主にライブハウスでライブが行われるため、最前で観るとなると相当アイドルとの距離が近くなる。
小さなキャパシティのライブハウスや新曲のリリースイベントのインストアライブの最前だと、少し手を伸ばすとアイドルに届いてしまうような、そんな距離感。
特典会もコストパフォーマンスが高く、48グループの個別握手会が握手券1枚につき7~10秒なのに対して、同じ値段で20秒以上与えられる。
しかもファンがそこまで多くないため、アイドルからの認知もかなり楽。
最初はメジャーアイドルで経験したことのなかった距離感に戸惑いつつも、慣れてくるとその身近な距離感が楽しく感じるようになってきた。
アイドルとの距離感の近さは魔力。
先日久しぶりにキャパ100くらいのライブハウスの最前でアイドルのライブを観た。
すごくアイドルとの距離が近かったし迫力も感じた。
さらに好きなアイドルと目がたくさん合った……ような気がする(脳内お花畑)
こりゃあ、地下アイドルオタクが地下アイドルに入り浸ってしまうのもわかるなと思った。
ライブの自由度が高い
メジャーアイドルの全席指定のホールコンサートとは違い、地下アイドルはライブハウスのオールスタンディングのライブが主なので、思う存分はしゃぐことができる。
地下アイドル現場に行き始めた当時の僕には衝撃的だった。
ハロー!プロジェクトやスターダスト出身のオタクはあまり実感しないことだろうが、地下アイドルやローカルアイドルの楽曲とライブパフォーマンスの良さにも度肝を抜かれた。
そうなると48グループの最近の楽曲は微妙でライブパフォーマンスもぬるいし、ホールや劇場の座りの公演では物足りないと感じるようになり、いつしか「48グループはクソ」だと思うようになってしまった。
勢いを感じられた
東京女子流、Dorothy Little Happy、アップアップガールズ(仮)など、今ではすっかり勢いが無くなってしまっている……
しかし当時は「もしかしたら、本当に売れるかもしれない」という勢いと予感を感じさせた。
そしてTIFなどの大型フェスが「アイドル戦国時代」と言われる次世代のアイドルが凌ぎを削りあうという構図を作り、さらにメジャーではないアイドルの勢いを増幅させた。
一方で48グループは、抱えているアイドルが多く飽和状態であり、なかなか自分の好きなアイドルがブレイクすることが難しい状況に。
また運営の不手際とライブ・握手会の質の低下が著しく、メジャーではない現場を知っているアイドルオタクから見るとつまらなく感じた。
地下に飽きてメジャーへ
地下アイドルに勢いがあった時代が終わってしまい、今は「地下に飽きてメジャーへ」という現象が起こっている。
「メジャーに飽きて地下へ」の場合と対照的に地下で不満を募らせたオタクが、
地下アイドル現場にないものをメジャーアイドル現場に求めるようになってきた。
地下アイドルは結局売れない
2014年以降になると、徐々に地下アイドル・ローカルアイドル業界に陰りが出始めた。
アイドルグループの解散やアイドルの卒業が増えてきた。
一例を挙げると、個人的に印象的だったことは、Dorothy Little Happyの分裂騒動。
ステップワンの社長がロクでもない人物だから、出ていった3人(とスタッフ)のことを考えると、起こるべくして起こったことかもしれない。
ただ、あの5人なら「何かやってくれるんじゃないか」と思っていた。というかそんな雰囲気があった気がする。Dorothy Little Happyはライブも楽曲も本当に良かった。
だからこそ、問題の5人ラストライブを観たこともあり、当時の僕はショックだった。
また、単純に地下アイドルのクオリティが下がってきた。
ライブはつまらないし、全くかわいくない承認欲求の塊だけのアイドルが増え、大型対バンがつまらなくなっていった。
さらに乃木坂46・欅坂46が名実ともに48グループを追い抜き、日本で一番のアイドルグループになったことも、結局、メジャーアイドルしか成功しないことをオタクがより感じてしまう要因となった。
全力でオタクをすることに疲れた
単純にアイドルの追っかけに飽きてきたことも、メジャーアイドルに逆流出する要因となった。
アイドルオタクは1つの現場に足しげく通うと、アイドル現場の楽しさだけでなく、アイドルの闇も知ってしまうようになる。
好きなアイドルグループが全然売れなかったり、アイドルを本気に好きになってしまったけどスキャンダルが発覚したりして、本気でオタクをすることが馬鹿馬鹿しく思ってしまい、適度に楽しもうとするオタクが増えた。
メジャーアイドル(乃木坂・欅坂)なら、イベントに行かずに、テレビ番組を観ているだけでも楽しめる。
また地下アイドルから地下アイドルへの流出も、だいぶ減ったように感じる。
それは恐らく、アイドルイベントの楽しみ方をある程度やり尽くしてしまったからだと考えられる。
僕も正直アイドルを楽しむ以下のプロセスに飽きた。
①新しいアイドルグループに通い始める
②推しメンから顔と名前を覚えられる
③どんどんハマっていって、おまいつになる
(※おまいつ:「おまえいつもいるな」の略、意味は読んで字の如し)
④飽きるか、売れないことや嫌いなオタクにイライラしてしまい、好きなアイドルグループを見限る
⑤①に戻る
冷静に考えると、通うアイドルグループを変えても、現場に通うプロセスは上記のように全く同じである。
そのことに気付いてしまった僕は、通ったことのないアイドルグループを観に行くのをほぼやめてしまった。
同じことの繰り返しだから。
仮に今通っているアイドルグループ以外のアイドルグループのライブを観に行くとしても、握手会などの特典会行くのはもういいかなという心境になった。
もしかしたら、僕のように考えるようになったオタクも多いのではないだろうか。
後はメジャーアイドルとか地下アイドル関係なく、たまに通うくらいのペースで楽しむようになったり、若いオタクだと就職を機にアイドルからフェードアウトしてしまったりするケースが多く、これらも熱心なオタクが減っていってしまっている要因である。
このように、メジャーアイドルではないアイドルグループで本気でオタクをするオタクが減ると、当然アイドルグループの勢いも落ち、さらに廃れていくという悪循環にはまってしまう。それが現状。
メジャー現場感を感じたい
メジャーアイドル・地下アイドルのイベントをひと通り経験して、1周回ってメジャーアイドルの良さを再確認するオタクが増えた。
普段から地下アイドルの廃れてしまった現場を見てると、メジャーアイドルの芸能人感や大規模な会場でのライブの楽しさが、逆に新鮮で良く感じられる。
なんだかんだ言って、オタクにとって自分が追いかけるアイドルが売れるかどうかがアイドルの現場選びでかなり重要であることがわかる。
これからのオタクの流動性
今まで書いたように、ある程度オタクをすると1周回ってメジャーアイドルの良さに気付いて、メジャーアイドルに逆流出するオタクが増えた。
これからはどのようにオタクが推移するか、これからのアイドルシーンも含め、僕はこう考えた。
オタクの流動性
オタクにとって、アイドルグループが売れるかどうかが通うアイドルグループを選ぶ上での大きなポイントの1つである。
よって今まで長々と書いてきたものの、乃木坂・欅坂のメジャーアイドルはもちろん、勢いを感じるアイドルグループに通う傾向はこれからも変わらないのではないかと考えている。
オタクにとって、アイドルグループが前に進んでいる感覚を共有できることはこの上ない楽しさを感じるものだ。
それがたまたま「やっぱり、メジャーアイドルだった!」ということではないのだろうか。
オタクはなんだかんだ売れているところ、勢いのあるところが好きと結論付けたので、これから具体的にオタクが集まりそうな現場を次の項目で挙げる。
これからのアイドルシーン
僕はこれからのアイドルシーンを次のように予想している。
「乃木坂・欅坂の46グループの1強が続くが、まだ他のグループが台頭する余地がある」
46グループの人気を脅かすようなアイドルグループはしばらく出てこないと思うから、勢いが落ちてきたとしても、46グループが日本のトップであることはもう数年続きそう。
46グループのトップはしばらく揺るがないと思うが、売れそうなアイドルグループがいることは事実である。
ロック系アイドルのPassCodeとBiSHも勢いがあるし、わーすたも4/22のZepp Diversity Tokyoのライブの動員1000人以上を動員しながらもまだまだ勢いを感じる。虹のコンキスタドールも川崎CLUB CITTA’を埋めて進歩を見せている。
(※もしかしたら、上記の現場のおまいつはそう思わないかもしれないが……)
個人的にはこれらのアイドルグループがブレイクしなかったら、もう売れるアイドルグループはないと思う。
このように46グループのようにトップまではいかなくとも、少し前のでんぱ組のような日本武道館を埋められるようなポテンシャルを持つグループは実際に存在する。
だから、オタクも(メジャー現場を含め)そのような現場に通う人も増えるのかなと予想している。